『神様のカルテ』

メガネさん

2010年02月13日 18:19

こんにちは、メガネです。


2010年本屋大賞ノミネート作品。
現役医師によるデビュー作です。



『神様のカルテ』

2009年9月1日初版第1刷発行
2009年11月3日 第3刷発行

著者:夏川草介
発行:株式会社小学館

定価:¥1200+税
主人公が過酷を極める地域医療の現場で、「命の現場」最前線の砦として働く姿が中心に描かれています。
妻や、現場の同僚、「御岳荘」と呼ばれる住まいの仲間たちとの触れ合いもあり、「命」とは何か、医療とは何かと葛藤する姿とともに、真摯な態度で患者さん、病気に向き合う姿に心を打たれます。

その文体と、同じイラストレーター(中村佑介)による表紙絵のせいか、「森見登美彦」作品に似ていると書評している人もいましたが、僕はあまり気になりませんでしたね。

過酷で救いのない悲壮感さえ感じかねないテーマを温かい人間関係も織り交ぜながら、何とか現実を知ってもらおうという作者の意思のようなものを感じました。

たった一文、たった一言で笑ったり泣いたり…。
家族を看取った経験のある人間には耐えられないです。
あぁ、こんなにも患者のことを考えてくれる医者がもっといたなら。

それでも所々で、大病院が僻地医療を何とか維持しているシステムである、決して無駄なことばかりではない、などという補足を行い、可能な限り読者に偏りのないイメージを持たせようとしているんじゃないかな、とも思いました。

他にも、医者が自分の判断ですぐに患者さんを処置できる権限の恐ろしさを正直に吐露する一面も。
チューブにつながれ、無理やり呼吸させられ、1週間生き延びることは命に対して失礼なのではないか。
現代医療で全力を尽くせば確かにそれは可能である。
しかし、それで本当にいいのか、なんて誰にもわかりませんよね。

答えはないですが、1人1人が考えてみる、そこから始めないといけないんだなと考えさせられる作品です。


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