『押入れのちよ』

メガネさん

2009年04月07日 00:50




『押入れのちよ』

荻原 浩(おぎわらひろし)著
新潮社文庫
定価:本体552円(税別)

平成21年1月1日発行


ホラー短編集です。
怖いだけのホラーではありません。

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1、人間の業にゾッとする最初の「お母様のロシアのスープ」。

2、さわやかな青春時代とその後を切ない人間ドラマで描いた「コール」。

3、押入れに住む、悲しい過去を持つ市松人形「ちよ」と主人公が繰り広げるちょっと笑える物語「押入れのちよ」。

4、得体の知れない年老いた猫に家族が魅入られていく、言い知れない不安を描いた「老猫」。

5、憎み合う夫婦がお互いを殺すための完全犯罪を企て、実行に移していく「殺人レシピ」。

6、夫の両親を介護するとみせかけて、虐待していた主人公とその夫である自分の息子にそれ(自分の妻を嫁に殺されたこと)を知った姑が復讐をする「介護の鬼」。

7、愛人を殺したマンションに突如現れた訪問者と、それを隠そうとする主人公との滑稽なやりとりが描かれた「予期せぬ訪問者」。

8、幼少期に妹を行方不明で亡くした姉が、歳月が経った後で真実に触れる「木下闇」。

9、同級生の男の子が夜中に突然現れて、主人公の女の子を連れだし自転車で出かけるも、実はその男の子は…「しんちゃんの自転車」。

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全9編からなる作品です。
読み応え抜群。
展開も面白いし、怖い部分もありながら、親しみのもてるどこか憎めない幽霊の登場が更に物語を面白くしています。


見えないものの存在を想像する上で、単純な恐怖だけではなく、どこか心に語りかけてくるような温かさをもった作品なので、怖いものが苦手な方でも安心して読めると思います。


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